19 エピローグ―人の話をうのみにしない―



19 エピローグ―人の話をうのみにしない―

「丈夫で長生きしたかったら本屋へ行くといい。棚一杯にその秘訣が詰まってる」
これは現代の情報社会を言い得て妙なるジョークの一つといえるでしょう。

人の話を直ちに信じない最近の例が、2009年のノーベル医学生理学賞です。受賞したのはカリフォルニア大学のエリザベス・ブラックバーン教授ら3人で、その理由は、「染色体の末端にあるテロメアが、細胞の老化を防止する仕組みの解明」が評価されたことによるものです。

しかしこの研究は、約30年も前のもので、発表当初からこのテロメア説は大変注目を集めていて、老化の問題を明らかにする有力な手がかりの一つと信じられてきました。

1980年の業績がいま、ようやく脚光を浴びることになった背景には、スウェーデン王立科学アカデミーが、慎重の上にも慎重を期した結果とみることもできます。
ノーベル賞は素晴らしい知的業績を数多く見出してはきましたが、時には派手な間違いもしでかしました。

われわれ医学の世界で忘れられない負の遺産の一つが、1949年のノーベル医学生理学賞です。ポルトガルの医師エガス・モニスは、精神病患者の治療法として脳の一部を切除する「ロボトミー手術」の考案によってこの賞を受賞しました。しかし現代では、その評価は一変し、最悪の治療法とされています。

アカデミー賞作品のアメリカ映画「カッコーの巣の上で」は、この手術で廃人になってしまった人物を、ジャック・ニコルソンが演じて衝撃を与えました。

いまある書店の健康情報も、いつまで信用を保っていられるか予想もつきません。そこで最後にゲーテの格言をそえてお別れの言葉とします。

気持よい生活を作ろうと思ったら

済んだことをくよくよしない

滅多なことに腹を立てない

いつも現在を楽しむ

とりわけ人を憎まぬこと

未来を神にまかせること

― END ―

【東葛まいにち】2013年1月号掲載


                                                  

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