6 先輩へ相談



6 先輩へ相談

自分の体が動かない、声が出ない…そんな状況を忘れてしまっている。社員らが来ても声も出ず、何も話すことができない。不安を大きくするだけだということに気付いていない。

何かを考えていたつもりでも、ただ眠り続けていたというのが実態かもしれない。気が付いたら火曜日、3日目になっていた。

そうだ、携帯電話という便利なものがあった。左手の太い親指で何人かにメールを打った。うまくは打てない、他のキーも押してしまう。

かつて、全日本クラスのコーチの経験を持つS先輩から「状況を知らせろ」と返信が来た。時間を掛け、まひのこと、言葉や排尿、味覚のことなどを書いて送信した。

突然、携帯が鳴った。
免疫治療でお世話になった護国寺のK先生からだ。なんでだ、話せないのを分っているはずだ。
誰も居ない―。出るしかない。出ると、いきなりいつものK先生の大きな声。

「声を出してみろ」
「・・・・・」
「声を出してみろ」
「・・・アアアッ」
「大丈夫だ。点滴は早くやめろ、口から物を入れろ、腹こわしてもいいから。間違っても手術はするな、いいな」

それだけ言うと電話は切れた。K先生は私より一回り以上も歳下だが、私が人生の師として彼を心酔し尊敬していることは、家族をはじめ私の周りの誰もが知っている。

先輩から再びメールの返信が来た。「スポーツトレーナーが今から病院に行くから、リハビリなどの打ち合わせをするように。病院とも打ち合わせするから心配するな」と書かれていた。

「東葛まいにち」2009年1月7日号掲載


                                                  

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