「手塚康平」という閃光



「手塚康平」という閃光

web3月15日、「2017YBCルヴァンカップ」グループステージ第1節・清水エスパルス戦。開始3分、右SB小池龍太選手がゴール中央へクロスを放つ。そのボールは相手DFが弾き返したが、その落下地点にはシュート体勢を整えたMF手塚康平選手がいた。
「ボールをゴールの枠に入れることだけを考えて足を振りました」という手塚は迷いなくシュートを放ち、ボールは緩やかな弾道とスピードを保ちながら清水ゴールへ一直線。虚をつかれたGKの手
をすり抜けながら、まるで約束されたかのようにゴールネットを揺らした。
「良い準備からシュートを打つことができましたし、蹴った瞬間に『入った!』と感じました。ゴールを決めることができて良かった」。
この試合がプロ初出場となった手塚選手は、卓越した左足のテクニックを持つ20歳。柏レイソルアカデミー出身で、下平隆宏監督の戦術も充分に理解している。試合の組み立てが得意なMFで、パスやグループ戦術に長けた選手を多く輩出してきたアカデミーの中でも屈指の「個」を持つ。
初出場で試合を通してその能力を遺憾無く発揮できた要因には、手塚選手を囲むように配置された「同志」たちの存在がある。
手塚選手の背後を固めたのは中谷進之介選手と中山雄太選手。レイソルの現在と未来を担う両雄と手塚選手はアカデミー時代から国内外の強豪を相手に幾多のパスを交わしてきたユニットであり、数メートル前方には賢者・中川寛斗選手。さらに左斜め後方には古賀太陽選手、そして、最前線には同期の大島康樹選手。手塚選手をプロテクトするような粋なメンバー構成に「自分はとても幸せ者ですよね」と話した手塚選手。ボールを持った瞬間に同じ志を持つ者たちが糸を引くように呼応を重ねて数多のパスを繋いだ。
「後ろの2人の存在は大きなものでしたし、自分がやりやすいようにボールを動かしてくれました。寛斗くんは必ず自分の前方に顔を出してくれたので自信を持って前を向くことができました。プレーの選択肢を広げてくれました」
手塚選手と阿吽の呼吸を見せた中山選手は、「康平とは試合中に特に多くの言葉を用いる必要がないくらい、お互いのプレーを信頼して分かり合っていますし、何の問題もありませんでした」と盟友への信頼を隠さなかった。
かくして、手塚選手のゴールを守り清水に勝利したレイソルからは6人もの選手が大会選定の公式のベストイレブンに選出。手塚選手自身はベストゴールとして多くの賞賛を集めるに至り、手塚選手が臨むステージは新たな景色を捉えたが、プロキャリアはまだ1試合。これからすべきことは手塚選手本人が一番分かっていた。
「清水戦ではクリさん(栗澤僚一)のおかげで自分らしくプレーできましたし、レイソルのMFにはタニくん(大谷秀和)や (小林)祐介くんという先輩たちがいて、安西(海斗)も控えています。でも、今回、少しかもしれませんが先輩たちに迫ることはできたと思う。また良い準備をして次の機会を待つことは変わりません」。
決して大口を叩くタイプの選手ではない。だが、その穏やかな口ぶりからはそこはかとない自信や決意を感じずにはいられなかった。
それだけあの夜に手塚選手が残したインパクトは雄弁だった。

 (写真・文=神宮克典)


                                                  

2017年03月29日 コメントは受け付けていません。 | トラックバックURL |

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