No181 氷食症



No181 氷食症

ある日、氷食症ではないかと、一人の女子高校生が遠路来院しました。


毎日、氷を食べたくてたまらず、ひまさえあれば氷をかじっているとのこと。近くの医療機関を何カ所か訪ねたものの、どこでも、そんな病気は知らないと言われたが、インターネットで見つけた氷食症の症状と似ているので、ぜひ調べてほしいというのでした。

氷食症は、あまり知られていませんが、氷を無性に食べたくなるという不思議な症状なのです。

強迫性障害という精神疾患の一症状としてみられることもありますが、多くは、体内の鉄分が不足することによって起こります。
毎日、冷蔵庫の製氷皿1皿以上を強迫的に食べるものという一応の定義はありますが、異常な食べ方をしていたら疑うのが賢明です。

女性は生理による出血により、常に鉄欠乏になるリスクにさらされており、鉄欠乏性貧血になる方も少なくありません。ところが、貧血症状は疲れや性周期にともなう体調不良と類似する点が多く見逃されがちです。

それに比べ、氷食症はあまり一般的にみられる症状でない上に、貧血にまで至らない軽症の鉄欠乏の段階でも起こるので、鉄欠乏の早期発見に役立つのです。

「血液検査の結果は、どうでしたか」

「あなたの予想通り、鉄欠乏による氷食症と考えられます。それも、かなり欠乏しているので、3~4カ月鉄剤を内服する必要があります」

1カ月後、「もう氷を食べたくなくなりました」と明るい表情で来院しました。

「疲れにくくもなったと思いますが」

「はい、以前より体が軽い気がします」

鉄欠乏と言うと、貧血による動悸、息切れ、頭痛など酸素不足の症状が強調されますが、鉄は、エネルギー産生や脳の機能保持にも使われるので、持久力、記憶力、理解力、情緒、生活リズムなどにも影響するのです。

「頭もよくなってきたはずですが」

「本当ですか、まだ実感がありません」

「では、楽しみに待っていてください」(笑)

次回は、「楽しいこと」。

【東葛まいにち】2013年1月号掲載


                                                  

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