No.162 目標
不登校など思春期病の子どもへの対応として、子どもを信じることを勧めています。
信じるとは、子どもの価値観を正当なものと尊重することであり、尊重するのであれば、親としての発言(干渉、介入)のほとんどは不要であろうとの観点から、まずは黙ることを当面の目標としています。
ところが、この〝黙る〞ことは意外と難しいもの。これまで、しゃべることについて気楽に、なんの疑問も持たずにいた人が、「さあ、黙りましょう」と言われて、すぐに黙れるわけはありません。私たちには、なかば習性としてしゃべる傾向があるので、(黙ろう)と決意していても、ついしゃべってしまうものだからです。
ですから、黙れるようになるためには、しゃべる習性を変化させる工夫が必要になります。
習性というのは、同じような状況に際して同じような行動をするように、脳に刻まれたパターンのようなものですから、それを修正するには、どんな状況にどんな行動が結びついているのかを知らなくてはなりません。
かといって、脳の中の行動パターンを、過去の行動から推測、把握するには、記憶があいまいすぎるので、より現実的には、脳の中のパターンが表に出たとき、すなわち、しゃべってしまったときに、そのきっかけとなった状況としゃべった内容を照合し、習性の正体を探知することが良策となります。
親として、子どもに不安、苛立ち、心配、悲しみ、同情などの負の感情を覚えたときや、自分によい考えや答えが浮かんだときは、ついしゃべってしまう危険性が高いものです。
ついしゃべってしまったと気づいたとき、大切なのはしゃべったことではなく、それに気づいた事実です。これまで気づかずにいたことに気づいたことこそ決意の成果だからです。その上で、その時の自分の気持ちがどうであったかを考えてみればよいわけです。
SDKS+C(信じる、黙る、聞く、すべて任せる+自分が変わる)の〝黙る〞の実現には、直接黙ることを目標とするよりも、偶発的なしゃべりに気づき、そぎ落とすことを目標とするほうが、より現実的で効果的なアプローチとなるでしょう。
次回は、「登校」。
「東葛まいにち」2011年5月号掲載
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カテゴリ: 思春期ブルー
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