No.166 きっかけ



No.166 きっかけ

私たちは、自分の行動はすべて自分の意思で行っていると思いがちですが、行動の大半は脳によって自動制御されている、と少し前のコラムで書きました。

ちょっと実生活を振り返ってみれば、食事中や歩行中、すべての動作を意図的に行っている訳ではないことが分かるはずです。「おいしそう」と箸が伸びても、口に入れてかむ段階では、部分的には(よくかもう)と思うにしても、ほとんど自動的にかんでいます。

これは、行動の一つひとつに思考回路を回していては、膨大なエネルギーを消費することになるので、過去の記憶に類似したパターンがあると、脳は思考を最低限に抑え、過去のパターンに準じた指令を行って省エネを図るのです。

このように行動を習性化するのは、確かに合理的なシステムに違いありませんが、何らかの理由で、これまでと異なる行動パターンで暮らそうとすると、かえって不都合なシステムとなります。

思春期病の対策として、親が子どもに対し〝信じる、黙る、聴く、すべて任せる(SDKS)〟ことをお勧めしていますが、多くの親は「なかなか黙れません」と訴えます。黙ろうと思っても、これまでの習性が邪魔をして〝つい〟しゃべってしまうからです。

この習性を変えるのがSDKS+Cをうまく行うコツですが、それには、習性的行動がどんなきっかけによって始まるのかを探ることが何より大切です。

もちろん、(さあ食べよう)など、きっかけが意思であれば探るべくもありませんが、きっかけが感情、感覚、欲望など心の波立ちである場合は、行動が起こってから気づくのがやっとかもしれません。つい苛立って、つい焦燥感に駆られて、つい支配欲に襲われて、といったきっかけは、振り返って探り当てるしかないのです。

不本意なしゃべりなど習性的な行動に気づいたら、その度に、きっかけとなった心の波立ちを振り返っていると、やがて、波立ちの時点で不本意な行為が起こることを予測できるようになり、小さいレベルの波立ちから順に乗り越えられるようになります。

次回は、「言葉」。

「東葛まいにち」2011年9月14日号掲載


                                                  

2011年09月13日 No.166 きっかけ はコメントを受け付けていません。 | トラックバックURL |

カテゴリ: 思春期ブルー

トラックバック&コメント

まだトラックバック、コメントがありません。