「ボクは生まれてきてはいけない人間だった」アスペルガー症候群のある青年の悲痛 1



「ボクは生まれてきてはいけない人間だった」アスペルガー症候群のある青年の悲痛 1

「テルオチャン。俺は生まれてきてはいけない人間だったんです。母が妊娠しても中絶されるべきだったんです…」。宏君(25歳、4大卒、高1でアスペルガー症候群と告知)からの電話。

このケースは時々あるのだが、一向に慣れない。毎回、心臓を撃ち抜かれるような身震いを感じる。

『何があったの?話せるか?』

「今日もパニックになった。自分をコントロールできない。母をなぐってしまった。父と取っ組み合いになった。両親の口論も俺が原因だ。妹や弟を怖がらせてしまう…」。

『…長い電話になるがいいかな。僕には今53歳になる卓君という自閉性の強い、重度の知的障害もある教え子がいる。小4の時、僕の勤務する小学校の学区内に家族全員で転居してきた。卓君を僕の学級に転入させるために。妹さんは、前の学校を兄のために転校。結婚する時も「兄を受け入れてくれる人」を選んだ。母は内向的な方であったが、PTA役員などを進んで引き受け「卓のお陰で地域の方々とも交われるようになりました」とニッコリする。父は大手T自動車社員、将来を嘱望されていたが卓君を僕の学級に置きたいために転勤を2回も辞退したので出世コースから外れた。「卓は私達への天の配剤ですから」と言っている。…こんな家族をどう思うかね?』

「良い家族だと思います」

『そうだね。この家族は卓君を真ん中に据えて、3人が周りを温かく囲み、慎ましくて優しくて、でも暗くならず卑屈にならず幸せな家庭を創っているよね。この話は、君の家族と比べるために話したのではない。一つのモデルとして話しただけだ。…君は、障碍(がい)を持っていることを認識する事ができている。パニックの時、父母・妹弟に迷惑を掛けてしまうことも自覚している。自分を否定するような猛反省もできている。…素晴らしい人間だ。…君の両親は君のことを「我が子であるが天・神仏からの預かりものでもある」という想いで大事に育てている。君の将来を考えて、故郷を離れ秋田から柏に転居してくれ、妹弟も承知して転校してくれている。君のことを想えばこその家族ではないか!…』

長い電話はまだまだ続く。宏君は静かに聞いている。

次回へ――。

「東葛まいにち」2013年4月24日号掲載



 


                                                  

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