「パンを盗まなくても大丈夫!   あなたに手をさしのべる人はきっといる」



「パンを盗まなくても大丈夫!   あなたに手をさしのべる人はきっといる」

心療内科で「境界性パーソナリティ障害」の疑いと診断され通院を続けている晶さん(28)は、気分のむらがあり安定して働くことが難しい。ときに死にたい衝動にかられ、それを抑えるために自分の髪の毛を切り刻む、リストカットやOD(過服薬)などの行動も見られる。

晶さんは、カウンセラーに今後の生活の不安を訴えた。

「うまく働けなくて…。週2日3時間のバイトがやっとです。もうじき、父が定年。どうしたらいいか…」と。

自分を奮い立たせるかのように続けた。

「…どうにもならなくなったら、バイトを増やしてみて…、それが駄目だったら生活保護の申請をしてみて…、それも通らなかったら…、パンでも盗んで…お巡りさんのお世話になります。…なんとか生きていたい!」

カウンセラーは腕組みをしながら「考える方向性を間違えています」と。
晶さんは涙があふれ「それならどうやって生きていけばいいのですか…」と声を震わせた。
生活保護を断られた青年が餓死するというニュースの流れていた頃だった。

2~3カ月が過ぎて、デイケアなどの設備が整っている病院に転院した。
そこの医師に「前の病院で受けていたカウンセリングは、どうしてダメになったの?」と聞かれる。
晶さんは共感して頂きたくてすがる思いで前記の話をした。

ところが、医師は即座に「盗むことは犯罪ですからね。バイトを増やして下さい」と言うのだった。また涙があふれた。

 【〝死にたい〞を口走っていたあなたが、パンでも盗んでお巡りさんの世話になってでも〝生きていきたい〞と思えるようになったんだ。うれしいね。だけど、あなたが警察に捕まっているのはもったいない。あなたの、観音様のように優しい慈愛の心をいろんな人達に分けてあげて欲しいね】
と、なぜ言ってくれないのか。

【殺伐とした世の中ではあるけれど、万一あなたが働けなくても、あなたに手を差し伸べる人はきっといます。パンを盗まなくても大丈夫】とも。

一歩前に出ようとする晶さんの背中に温かい手の平をそっと触れてくれる医師・カウンセラーに早く出会わせたい。

「東葛まいにち」2010年3月10日号掲載


                                                  

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カテゴリ: 子どもの広場

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