No.159 宿題忘れた子に注意しようとすると「照ちゃんは左利きだよ」とほほ笑む子ら



No.159 宿題忘れた子に注意しようとすると「照ちゃんは左利きだよ」とほほ笑む子ら

照ちゃんは小学4年。
担任のM先生は怖い先生でした。宿題もいっぱい出します。

照ちゃんは国語が苦手です。漢字練習の他に全文筆写といって教科書の5~6ページもある物語の全文をノートに書き写す宿題も出されます。

その日は、学校から帰り大根の取り入れの手伝いです。母やんや姉やんは鎌で葉を切り落とし、かますに入れます。照ちゃんは抜いて運びます。

手伝いながら

〈全文筆写の宿題はやりたくない。そうだ!人差し指を包帯して「昨日、大根取りを手伝って指を切ってしまい書けませんでした」と言おう。宿題はやめた。いい考え。これなら大丈夫、先生をだませる〉。
寝床の中でも言い訳の練習を何べんもしました。

翌日、国語の時間。照ちゃんの心臓は先生が近づくにつれて、先生の牛皮スリッパのようにゴッツゴッツゴッツゴッツと高く鳴りました。スリッパが止まりました。

『どうした?』
「昨日大根取りの手伝いをしていて指をケガしました」と、包帯している右手を机の上に乗せました。
すると『おかしいな?どうして右の指を切るんだ?』と先生。
照ちゃんは一瞬、意味が分かりませんでした。次の瞬間「あっ、右手に鎌を持っているのに、右手を切るって無い」。頭が真っ白になって、体中の血の気がスーっと足の裏から抜けていきました。

その時、斜め左後ろの方から「照ちゃんは左利きだよ」の声がしました。先生は『そうか』と次の子に進みました。

それから10年後、照ちゃんは小学校の「先生」になり、自分が宿題を出す羽目になったのです。
宿題を出す時、決まって『照ちゃんは左利きだよ』を思い出します。それで、その子その子に合った宿題を出すように心がけるのでした。

「宿題出来ませんでした」と告げに来る子をきっかけに「実はボクもね」と、この話を告白します。子供たちは、どっと拍手して「よかったね。いい友達だね。」と照ちゃん先生に親近感を強めます。

宿題を忘れる子に注意しようとすると「照ちゃんは左利きだよ」と声を掛ける子も出るのでした。
先生も思わずニッコリしてしまうのでした。

「東葛まいにち」2009年3月11日号掲載


                                                  

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