No.166 発達障害のある子と共に育つ5  海君の描いた「大きな大きな白ユリの花」



No.166 発達障害のある子と共に育つ5  海君の描いた「大きな大きな白ユリの花」

植木鉢からまっすぐに伸びた白ユリが、1つだけ大きな花をつけました。
海君はそれを描くことにしました。

海君は小学5年生。自閉症があります。うまくお話ができません。けれど、クレヨン画を描くのが得意でした。

まず、白い画用紙全面に白色を塗る。その上に色を重ね、濃く縁取っていく。これが海君のこだわりの画法です。

縦にした画用紙の下の方に白ユリの鉢を描き始めます。直径20cmくらいの鉢を、ドンと描いて、それから白ユリの太い茎を伸ばし、葉を2枚描きました。

「あれ?画用紙いっぱい…」先生は、あわてて、新しい画用紙を上につなげました。

海君はその紙にも白をぬって、茎を描き伸ばし葉っぱを付けていきましたが、紙のてっぺんまでいっても、白ユリの花は出てこない。

先生は、もう1枚新しい画用紙をのり付けしました。その紙も白色で塗りつぶしてから描き続けます。

ついに、4枚目の画用紙で白ユリの花が咲きました。本物の3倍もある白ユリが白地に浮き上がりました。

先生は「なんでこんなに大きくなっちゃったのかな?」と絵をじっくり見ました。
葉っぱの数をかぞえてみると本物と同じ枚数あります。1枚1枚の葉っぱをよく観て描いているので、葉が大きくなり葉と葉の間隔が本物より広くなっているのでした。
細かいところを見逃さない海君ならではの特徴が出ているのです。
先生は、絵に裏打ちして学級のみんなに見せました。拍手喝さいです。

その年度は、学芸会がある年でした。学級の全員が参加する劇をするのです。海君も楽しく自然な雰囲気で舞台出演できるようにと、脚本に手を加えてみるのですが、なかなかうまくいきません。みんなは思案に暮れました。

その時、誰かが「海君の白ユリの絵を舞台に飾ることにしよう」と提案しました。みんなは大賛成。舞台は家の中の設定でしたからぴったりです。当日は、みんなで作った額に入って、ますます立派になった海君の大きな白ユリ、まるで主役です。

海君のお母さんは泣いていました。

照ちゃん先生のむかし噺でした。


                                                  

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